千葉 則茂
概要:
自然景観の映像表現など自然らしさの表現のためのCG技術,すなわち“自然のCG”技術が実用化時代を迎えている.それは,“使える技術の確立を目指した研究”が期待されており,CG研究の環境整備をも急がなければいけないことを意味している.今後に期待される自然のCG技術の実用化・体系化研究について整理する.
CGのための樹木の根と地上部の総合的生長モデル
大志田 憲 村岡 一信 千葉 則茂
概要: (English)
コンピュータグラフィクス(CG)による樹木のモデリング法に関する研究,特に生長モデルの開発はとりわけ活発に研究が行われてきた分野のひとつである.しかしながら,樹木の地下部である根の生長モデルについての報告は非常に少なく,さらに地上部との相互作用まで考慮した生長モデルは提案されていない.根は植物体の固着と地中からの養水分を吸収する器官で,地上部の生長に密接な関係を持ち,樹形に及ぼす影響は大きい.本論文では,まず根の生長モデルを提案し,次に,この“地下部”の生長モデルを既提案の樹木の“地下部”の生長モデルとを連携させた,すなわち地上部−地下部の相互作用を考慮した統合的な生長モデルを提案する.この統合的な樹木の生長モデルは,盆栽,ガーデニング,および庭園設計などをテーマとした,シミュレーション型のアミューズメントシステム,プレゼン支援システム,および教育支援システムなどに応用を持つ.
風による樹木の揺らぎ画像生成法の検討
千葉 則茂 河野 充 佐藤 義人 村岡 一信 斉藤 伸自
概要: (English)
CGによる樹木の画像生成の試みが,形の科学から芸術の分野まで多くの観点からなされてきている.著者らの一部も,種々の建設計画,フライトシミュレータやドライビングシミュレータ,および映画の特殊撮影効果などのための景観シミュレーションヘの応用を目指し,自然な樹形を生成する生長モデルの開発を試みてきている.このような目的からは,静的な樹形のみならず,枝や葉の風による自然な揺らぎの表現が重要となる.しかしながら,このような手法の詳細な報告はない. 本論文では,風による樹木の揺らぎのシミュレーション法について報告する.これは,樹木を“緩やかに拘束しあう隣接節点”からなる木構造を用いて表し,その動きのシミュレーションを行うというものである.すなわち本手法は,各節点が,数値積分の誤差に対する補正力を含む復元力を考慮した個別の運動方程式に従って運動するというモデルであり,単純で理解しやすいという特徴をもっている.
CGのための樹木の生長モデル
ー架空の「植物ホルモン」による自然な樹形の生成ー
千葉 則茂 村岡 一信 大川 俊一 三浦 守
概要:
樹木のCGによる画像生成は,自然景観のシミュレーションにおいて重要な位置を占める.庭園や公園、街路樹の並木など種々の建設計画における景観評価や,ヘリコプターなどの低空低速飛行機用フライトシミュレータやドライビングシミュレータのための景観シミュレーションにおいては,特にリアルな樹木の表現が必要となる.筆者らの一部はこれまでに,一様な枝の分布,広葉樹のような丸みのある樹冠の形成および自重によらない枝の杖垂れ形状を実現するためには,受光量不足による枝の枯死,枝先の向日性を考慮した生長モデルが有効であることを示している.本論文では,更に,樹木の性質である(a)頂芽優性,(b)休眠芽の休眠打破および(c)枝の幹化をも考慮した生長モデルによれば,これまでの生長モデルでは得られない複雑な形状の枝振りが実現できることを示す.この生長モデルでは,ある種の「植物ホルモン」の存在を仮定することにより,これらの性質を実現している.このことは,樹木全体の形状を監視し生長の仕方を制御する「中央制御装置」のようなものの存在を必要とせず,それぞれの芽が「ホルモン濃度」の絶対値や変化分に応じて発芽と生長を行うことにより,樹木全体としての形状が制御されるということを意味し,単純な生長モデルの開発という観点からも興味深いものとなっている.これまでにこのような生長モデルは提案されていない。
向日性による樹木の自然な枝振りのCGシミュレーション
村岡 一信 千葉 則茂 高橋 宏道 三浦 守
概要:
樹木のリアルなCG画像の生成は,種々の建設計画のための景観シミュレーションや,フライトシュミレータやドライビングシミュレータのための景観シミュレーションに重要な応用をもつ.リアルな樹木のCG画像の生成には,まずその自然な印象をもつ骨格形状を得ることが重要であり,これまでにもそのための生長モデルが活発に研究されてきている.しかしながら,これまでに提案されている,遺伝的に定まるような分枝パターンを与える生長モデルのみでは自然な樹形,すなわち丸みを帯びた樹冠の形成,受光量不足による杖垂れ,樹冠の再生を実現するような技振りをもった樹形は得られない.本論文では,まずこのような自然な樹形を安定に得るためには,環境との対話性,すなわち受光量不足による枝の枯死と枝先の向日性による空間探察機能を考慮した生長モデルが有効であることをシミュレーション例により示す.次に,モデルのもつパラメータと樹形の関係を明らかにする.最後に,樹形の経年変化,特に老木のような襟稚な樹形のシミュレーションを可能とするための今後の課題について述べる.
季節変化に基づく山岳景観画像生成法の検討
村岡 一信 千葉 則茂 高橋 匡 斎藤 伸自
概要: (English)
CGによる山岳景観のビジュアルシミュレーションは,様々な建設計画のための景観予想や評価,フライトシミュレーションや映画の特撮などにおいて重要な位置を占める.特に,落葉広葉樹林に覆われた山岳は四季折々の様相を呈し,見る者に快い季節感を与えるものであり,このような季節の山岳景観のシミュレーション手法の開発は興味深く重要である.本論文では,樹林の新緑・深緑・紅葉・落葉や積雪による山岳の色彩変化を考慮した季節の山岳景観のシミュレーション法の骨格となる,以下のような手法の構築のための基本的なアイデア・方針を提案する:(1)山岳の緯度・高度と地形に応じて植生を定める手法,(2)樹種に応じた色彩変化の系列を与える手法,およ
び(3)樹木の3次元モデルに基づく画像生成法.さらに,これらのアイデアに基づいたシミュレーション例を示し,その有効性を示す.また,計算機アルゴリズムとしてインプリメンテーションされていないアイデアについては,その突現の方針について言及もする.
渦場と粒子による煙や炎の2次元CGシミュレーション
村岡 一信 千葉 則茂 高橋 宏道 三浦 守
概要:
煙や炎の形や動きのシミュレーションは,コンピュータグラフィックス(CG)による自然現象のシミュレーションの中でもとりわけ興味深い課題である.このため,これまで煙や炎のCGシミュレーションのための手法がいくつか提案されているが,障害物が配置されていても容易にリアルなシミュレーションができ,形や揺らぎの制御が容易であるような手法としては,いずれも完成されているとは言えず,更に新たな試みが期待されている.本研究では,煙や炎を基本的には「煙や炎の粒子」による気流の可視化像であるととらえ,その形や動きをシミュレーションする手法について2次元に限って検討を行ってきた.本論文では,まず煙や炎の粒子の流れをシミュレーションする渦場による手法について述べ,次に粒子の移動軌跡から画像を生成する手法について述べる.更に,これらに基づく煙や炎のシミュレーション例により手法の有効性を示し,最後に渦や粒子の行動規則について詳細に検討を加えその意味を明らかにする.
冬季の近接景観のシミュレーションのための積雪モデル
村岡 一信 千葉 則茂 太田原 功
概要:(English)
生育環境を考慮した苔のビジュアルシミュレーション
小笠原 祐治 村岡 一信 千葉 則茂
概要:(English)
自然景観を構成するさまざまな物体や現象をリアルに表現するCG技術の開発がますます重要なテーマとなってきている.苔のCGによる映像生成は,灯籠,飛び石,敷石,石垣などの石材物や地面を含む景観映像の生成において,経年変化や質感表現の観点からひじょうに興味深いテーマでもある.本報告では,苔の生育環境として,日射量,気温,湿度,および土壌(生育媒体)などの要因を考慮して,苔の定性的な生長シミュレーションを行う方法を提案する.
キーワード:コンピュータグラフィックス,自然現象,植物,苔,生長モデル
ひび割れの行動モデルとそのCGへの応用
千葉 則茂 海野 啓明 和田 誓一 村岡 一信
概要: (English)
渦のようなものを乾かしてできるひび割れは,粘着性の度合により乾いた地表面のひび割れからガラスのそれをも含むいろいろな形状を示す.もし,このようなひび割れ形状を生成できるような行動モデルが開発できれば理論的にもCGへの応用上も興味深い.本論文では,まずこれらの粘着性の違うひび割れ形状の特徴を解析し,ひび割れの行動モデルの構築のためのいくつかの仮定を示す.次に,これに基づいて粘着性の強さをパラメータとするひび割れの行動モデルを提案し,シミュレーション例によりその有効性を示す.更に,ひび割れの形状のコンピュータグラフィックスヘの応用例,すなわちひび割れ形状による大理石模様や陶磁器のうわ薬のひび割れの表現例を示す.最後に,ひび割れの行動モデルを任意曲面上で動作できるように拡張するための今後の課題について言及する.
振動翼理論に基づく仮想錦鯉の運動シミュレーション
真鍋 高英 播摩 敏雄 安斎 祐一 千葉 則茂 齊藤 伸自
概要:
本研究では,CGによる錦鯉の運動モデルを生成する方法について提案する.一般に,鏑鯉や熱帯魚などの観賞魚は,餌を与えたときの反応や,泳ぎの優雅さを見て楽しむ.そこで錦鯉のモデル生成には,実時間で,かつリアルに動くモデルが必要となる.本モデルでは,より現実的で自然感のある鯉の動きを表現する.そのアプローチは,魚の動きに振動翼理論を適用した.魚を輪切り状に分割して,それぞれの制御点群に単関節逆運動学を用いて体の捻りを表現した.本モデルは実時間処理が可能であることから,実時間のシミュレーションにより,本報告で提案した錦鯉の運動モデルの有用性を確かめた.
電界を考慮した稲妻のCGモデル
ソソラバラム バトゥジャルガル 藤本 忠博 村岡 一信 千葉 則茂
概要:
ボリュームデータから有限要素法メッシュを構築する−手法
土井 章男 三浦 康弘 千葉 則茂
概要:
本論文では、ボリュームデータから3D Active Netを用いて自動的に有限要素法<FEM>メッシュを構築する手法を提案する.また,生成されたFEMメッシュを用いて変形シミュレーションを行う.使用したボリュームデータはVisible
Human Data(VHD)で,肘の筋肉や脚の部分を抽出して,本手法の有効性を確認する.